学生・研修医の方へ
留学便り
ボストンのMGHに留学中の狩野 元宏君からお便りが届きました。
ボストン留学便り[狩野 元宏]

さて、私は現在ボストン中心部にあるマサチューセッツ総合病院の小児外科研究室に在籍しています。ラボのトップであるDr.Patricia Donahoeは長年、慶應からの留学生を受け入れて下さっている70歳代の女性の先生で、特に泌尿生殖器発生、ミュラー管抑制因子(MISまたは抗ミュラー管ホルモンAMH)に関する研究では数々のJournalに論文をpublishされています。同じ研究室内には、その他に先天性横隔膜ヘルニアや腸管神経に関する研究を行う5-10人程度のグループが複数あり、それぞれactiveに研究をおこなっています。
私はそのうちのMIS研究グループに所属しています。近年MISは発生時期に留まらず、女性の卵巣で生成されることから不妊治療の指標となっていますが、その他副腎や脳においてもその受容体が発現していることが明らかにされてきています。私たちの研究グループは、Dr. DonahoeとDavid Pepin Ph.Dの2名を中心に、リサーチアシスタント3名とリサーチフェローの私、計6名と少人数ではありますが、卵巣癌に対する遺伝子治療、卵巣機能保護、不妊治療、性ホルモン・副腎ホルモンとの関係、ペットの避妊への応用など新たなMISの作用に注目して複数の研究を並行して進めています。

地域柄なのかもしれませんが、通勤時にスーツを着た人が非常に少なく、逆に目立つくらいです。朝の通勤時間帯には父親がベビーカーをおしてラッシュアワーのバスや電車に乗り、子どもを学校や保育所に送るなんて姿をしばしば見かけます。こんなところにも日本との違いを実感します。
24時間営業のコンビニや券売機つきの定食屋がない、電車が古くてオイル臭くギコギコうるさい、時間通りに来ない、照明が暗い、物価が高い。慣れ親しんだ日本から離れて暮らすには不便で住みにくいところもありますが、逆にだからこそ日本の良さが改めてわかり、有り難みを感じることもできました。
まだこちらにきて1年と経ってはいませんが、留学というチャンスから新たな視野を得ることができています。残された期間を大切にしながら、今後も研究に邁進していきたいと思っています。最後になりましたが、今回の留学にあたりご助力下さいました黒田教授、教室の諸先生方、皆様にはこの場を借りまして、改めまして深く御礼申し上げます。
2016年3月
狩野 元宏
狩野 元宏